監視長との出会い(回顧録 vol2)


 勉強会・講習会を終えて、いざ監視員へ・・・。
 そこでは、まったく経験したことのない、不測の事態の連続。マニュアルといわれるものが一切通用しない、海難人命救助の現状だった。 
 
 デカツルとの再会は、またまた衝撃的だった。
 「おまえ、ブロックやるか。」 「ブロック?!ですか」 「そう、ブロックだよ!!」
 “何なんだ、ブロックって?”と誰もが思う会話だ。
 当時の御宿海岸では監視業務に就くためには、10キロのブロックをもって約250m運ぶことと、遠泳(約1500m)30分以内が出来ることが義務付けられていた。
 ブロック運びが行われる漁港に向かい待っていると、デカツルがブロックを持って登場。本当にただのブロックだった。そこで、いきなりブロックを投げ入れ、
 「引っ張りあげて、向こう岸まで運んで来い。背泳ぎじゃだめだぞ。」
 もう、やるしかなかった。やらなければ監視が出来ないのだから、とにかく引っ張りあげて抱えた。浮力が働いているはずなのだが、水の中の10kgは想像した以上に重い。
 泳ぎが得意であった私は、体の大きさにも助けられブロック運びはクリアーできた。しかしながら、出来ない者もいた。
デカツル全員に同じスキルを求めた。いくら足が速くとも、泳げても、男でも女でも、関係なくブロック運び・遠泳のスキルを求めた。
 出来ない者は監視業務に就くことは出来なかったし、ユニフォームの着用さえも出来ないほどの徹底ぶりであった。
 
 今、振り返るとその理由がよくわかる気がする。人間を一人抱えて泳ぐということがどれほど大変なことか。ましてや、おぼれている人間を助けるとなると生半可な能力では到底対応できない。
 デカツル曰く、「ブロックが出来たからといって人が助けられるものではないが、少なくともおまえ自身は沈まずに浮いていられるだろう。」 
 私がこの言葉の意味を知るのはもう少し先のことである。

(つづく)