2007 International Surf Rescue Challenge
〜U22 日本代表 佐藤文机子 監督がみたU22ジャパンの素顔とこれから〜

2007年度 U22日本代表チーム 佐藤 文机子 監督


U22全日本代表監督 公式ブログ!!
 アイアンウーマン9連覇達成。
 日本のトップアスリートとしてサーフスポーツを牽引。出産を期に競技から離れ、生涯ライフセービングを実践。
 2007年度より日本ライフセービング協会 競技力強化委員・U22代表監督に就任。若手選手の育成に情熱を注いでいる。

大会概要

大会名:2007Internatiponal Surf Rescue
                       Challenge

主 催:サーフライフセービング オーストラリア

日 程:2007年11月29日〜12月1日

場 所:New South Wales Sydney Bondai Beach

     
 今回の大会は「Year of the Surf Life Saver」と題し、オーストラリア ライフセービング100周年を記念して開催されました。
 3日間同じ種目で争われ、総合ポイントで順位がつけられました。チーム種目が多いことが今大会の特徴で、各選手の出場種目も平均6種目以上と過酷なレース環境になりました。

 大会を通して感じたことを佐藤 文机子 U22代表監督に直撃取材しました。
 世界で戦った経験から、今後の全日本の可能性が見えてきました!!皆さん、要チェックです!!

(U22日本代表チームの強化方法とは??)

 若さが秘める力は未知数です。彼らの可能性は、無限に広がっているという考えのもと、U22日本代表チームをまとめてきました。
 同世代が集まっているので盛り上がると、きりがありません。それは大好きな仲間が集まったからこその盛り上がりであり、彼らの明るさには大きな力があると感じました。

 今大会に望むにあたり、まず選手に伝えたことは、「チームのために頑張れる選手になること」です。
 仲間を大切に思う気持ちとともに、相手の頑張りを自分の力に変えることができる選手になってほしいという思いから、選手の立場に立ったコーチングを行ってきました。

 種目構成が団体種目中心であり、チーム力が試される大会である、と感じていました。ですから、事前の打ち合わせから、ハードスケジュールに伴うコンディショニング、体調管理の徹底を指導するのはもちろんのこと、チームの状況を理解し仲間のために頑張れる人間関係の構築を目指しました。
 今回の結果が、その成果ではないかと感じています。

 U22日本代表チームも数名が入れ替わりました。チーム内には国際大会の経験が豊富な選手や初出場の選手もいます。そんな選手たちへ、「いつもどうりやればいい!!明日は今日よりも一つ上の順位を目指そう」と励ましました。彼らは素直にアドバイスを受け入れ、必死になってレースに望んでいたと思います。

 今回のU22チームが伸びた要因はこの素直さにあるのではないかと思います。「いろいろな話を素直に聞き入れること」が成長できる要素であると思うからです。
 これからも、「仲間の力を自分の力に変えることが出来るチーム」を合言葉に、チームマネジメントを行っていきたたいと思います。

(U22チーム躍進につながったことはなんですか?)

 U22での国際大会は3回目となります。
 初出場の全豪選手権で刺激を受けた選手、悔しさを受けた選手、それぞれいました。大会終了後、彼らから「次の国際大会も同じメンバーで出場したい!!」という言葉が聞こえました。このU22代表チームへの意欲は、向上心の表れではないかと思います。

 実はU22の「22歳」に設定したのは狙いがあります。
 それは、学生最後で日本代表に入ることで、生涯ライフセービング活動につなげてもらいたいという思いです。国際大会の経験は彼らの自信につながるとともに、今後のライフセービング人生で必ず活かされるようになるのではないかと信じています。私はU22日本代表チームは、そうしたきっかけと環境を提供できる場でありたい、と考えています。
 今回のチーム力の向上は、この条件がクリアーできた結果ではないかと感じています。

 U22日本代表チームからトップ代表へ何人が入れるかわかりませんが、多くの選手が全日本代表選手となって世界へ羽ばたいて行ってほしいと思います。多くの選手を輩出することが、自分のチームマネジメントへの客観的な評価だと思います。

 U22日本代表チーム 過去3大会の経験は、非常によかったと思います。私も多くの感動をもらいました。その反面、厳しさを感じるところもありましたが、私たちにとってすべてが勉強であり何一つマイナスなものはなかったと感じています。

 この経験を生かすも殺すも彼ら次第です。今後も彼らの努力を見ていきたいと思います。
 今、ライフセービングをこころの底から楽しんでいること、最もシンプルで大切なことである思います。その気持ちを忘れることなく、今後の成長に期待しています。

(佐藤 文机子 選手が見た世界のサーフアスリートの動向)

 今大会 上位3カ国のなかで、AUS・NZの選手はタフネス&パワフルだったと思います。体の大きさ、力強さは相変わらずで、選手層の厚さを改めて感じました。
 しかし、南アフリカとの競技レベルの差は縮まっていると感じました。これまでの国際大会の結果を見ても、日本チームは確実に近づいています。今回のメンバーがフル代表であるならば、日本チームに勝機は必ずあると思います。

 また、USA・UKは不思議なくらい伸びていませんでした。特にUSAメンバーの入れ替わりには驚きです。イタリア世界大会後、世代交代があったとは聞いていましたが、これほどまでとは思いませんでした。そして、UKチーム。歴史があり強い国、という印象があったのですが、今回はそれほどインパクトを感じませんでした。私が戦っていた頃のUK代表選手には、AUSを拠点にしている選手もいましたが、現在はそのような選手が少なくなっているのかもしれません。

 日本人選手はよく「体も小さく、筋力も少ない」といわれますが、諸外国の選手と比べて優れている部分が必ずあるはずです。ただ、弱点を強化するのではなく、優れた面を最大限伸ばすことで勝てるチャンスが広がっていくと思います。

 最後に、AUSのトップチームの厳しさを垣間見た大会であったと思います。
 U23チームと戦いました、彼らはトップチームにも負けないパフォーマンスの高さを見せてくれました。そんな競技領域の中でAUSトップチームに選ばれることは、名誉なことであります。そして、続けて選ばれている選手のプライド・ストイックさをひしひしと感じる大会でした。

(ライフセービング トップ選手とは)

 ライフセービング活動には競技もあれば、救命、教育、環境、福祉と活躍のフィールドは多岐にわたります。トップ選手にはこの活動の広さを考えてほしいと思います。

 「なぜ戦うのか。そして、その先に何があるのか」ということを明確に考えてほしい。ただレースの勝ち負けにだけで終わってしまっては意味がありません。ライフセービング競技を通して何がしたいのか、社会に対して何がしたいのかを考えてみてほしいと思います。

 ライフセービング活動において、競技だけが一人歩きすることはありません。
 ですから、競技一辺倒ではなく、生涯ライフセーバーとして活動に参加していくことが重要であると思います。
 
競技を通してメディアに取り上げられることも、一つの普及方法です。しかし、それだけで終わってしまっては意味がありません。
 その人がトップ選手として輝いている期間は一瞬かも知れないけれど、その競技力を活かしてライフセービングを社会に広めること、そして、選手を辞めてからも、率先して活動に参加し続けること。このように生涯を通してライフセービング活動に関わっていくことが、今後の日本ライフセービング界の大きな財産になると信じています。

(編集後記)

 U22日本代表 佐藤 監督のお時間をいただいて、直撃取材を決行しました。お忙しいところ、誠にありがとうございました。
 今大会のU22チームの成長は目を見張るものがありました。トップチームにひけをとらないチーム力、その要因はなんなのか、とインタビューを行いました。
 佐藤 監督の選手への優しさ、冷静な分析など、私も多くのことを勉強させていただきました。
 皆さんはどうですか??若手選手はU22代表チームを目指し、そしてトップを目指し頑張ってほしいと思います。
 トップチームの首脳陣は情熱の塊ですよ。

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